種子の発芽に必要な条件

ドーモ。今岡@初登板です。

突然ですが問題です。

種子の発芽に必要な条件を調べるために実験をし、下のような結果を得た。
この実験だけからわかることはどのようなことですか。
「種子の発芽には、」に続けて、発芽に必要な条件を説明する文を書きなさい。

[実験1] シャーレに水を1cmの深さに入れ、
    その中にダイズの種子を10個入れ、良く日のあたる机の上に置いた。
[実験2] シャーレに水を1cmの深さに入れ、
    その中にダイズの種子を10個入れ、ポンプで空気を送りながら、
    よく日のあたる机の上に置いた。
[実験3] シャーレに水を1cmの深さに入れ、
    その中にアサガオの種子を10個入れ、ポンプで空気を送りながら、
    光が当たらないように大きな箱をかぶせ、実験1,2と同じ机の上に置いた。

(実験結果)
実験1:種子はひとつも発芽しなかった。
実験2:すべての種子が発芽した。
実験3:すべての種子が発芽した。

上記は筑波大学附属駒場中学校の過去の入試問題(理科)です。
※同校研究部様には引用の許可を快諾いただきました。ありがとうございました。

別にビジネスモデルの種とか飯の種とか新人教育とかそういう話でもなければ、怪力の種とか龍殺しの種とかそういう話でもありません。ほんとうに植物の種の話です。が、これと似たような状況が業務中に起きること、ないでしょうか。

[状況1] PC端末のLAN端子にケーブルを接続し、
    他端をハブAに接続し、そのハブAをルータAにLANケーブルで接続した。
[状況2] PC端末のLAN端子にケーブルを接続し、
    他端をハブは通さずに直接ルータAに接続した。
[状況3] PC端末の無線LAN機能を利用し、直接ルータBに接続した。

(接続テスト結果)
状況1:PC端末からはインターネットに接続できなかった。
状況2:PC端末からはインターネットに接続できた。
状況3:PC端末からはインターネットに接続できた。

状況1のようなことに突然遭遇すると「インターネットがつながらない!」とパニックになってしまう方が少なからずおられます。お客様がこのように仰る場合はできるだけ詳細かつ具体的に何が起きているのかうまく聞き出しながら対応していくわけですが(2,3のようなことを聴き取って確認していく)、万が一技術職の同僚にこれを言われたら、「切り分けて」と言って取り合わずに一蹴するつもりで……いや、正直に申し上げますと、したことあります。

「切り分ける」という言葉は、ここではさまざまに考えられる中から適切な原因を切り分けて取り出すという意味合いで使われています。なぜインターネットに接続できる(できない)のか原因を取り出すことができたら、適切な対処ができます。また部分的にでも切り分けができていれば、原因の完全な特定までいかなくても、実際の対処に役立てることはできます。

「PC端末からWebサイトを閲覧する」という文字にすればただこれだけのことでも、端末とWebサイトの間にはたくさんのものがはさまっており、「切り分け」が必要になるポイントは本来無数にあります。


さて、冒頭に挙げた中学入試問題を振り返ってみましょう。これも同じですよね。状況と結果を見比べて、さまざまに考えられる中から適切な原因を切り分けて取り出す、しかも与えられた条件だけを使って言えることだけを答えよとしているぶんこの中学入試問題のほうが高度かもしれません。

ここでは敢えて入試問題のほうの解説を不肖私めがいたします。


種子の発芽に必要な条件を調べる実験1-3の条件を表にすると見通しがよくなります。
conditionTable表1: 実験条件を表にしてみた

このような、条件を少しずつ変えながら結果を見て原因を推定/特定するための実験を「対照実験」と呼びますが、今回は「種子」「光」「空気」の3つの条件を変えながら種子の発芽の状況を見て、種子の発芽に必要な条件を調べようとしています。

conditionTable_1-2図1: 実験1と2の違い

実験1と2を比較すると、「空気がなければ発芽せず、空気があれば発芽する」とは言えそうです。これはほかの条件を同じにしてあるからそういえるわけですね。

conditionTable_2-3図2: 実験2と3の違い

実験2と3を比較すると、条件が同じになっているのは「空気の有無」だけです。この比較はあまり意味がありません。種子の違いが結果に影響したのか、光の有無が結果に影響したのかわかりません。空気があって発芽している、という結果自体は実験1と2の比較から導かれることとも矛盾しません。
なお、実験1と3については条件がすべて違い結果も違うため、さらになんだかわかりません。

この問題は「この実験だけからわかることは何か」と問うていますから、あくまでダイズとアサガオだけで他の種子だとどうなるのかはわかりませんし、光の有無についてはこの実験ではよくわかりませんが、問題文の条件からすると、

種子の発芽には、空気が必要である。

とだけ書くのが最も妥当であるということになります。
一般論として「種子の発芽の原因には光の有無は関係ない」ことが知られていますが、この実験だけではその一般論は導けないので、知っていてもそれを答えてはいけないのです(おそらく減点でしょう)。あるいは、その一般論を導くにはどんな実験を追加すればよいか考えてみるのもいいですね。業務で発生するいろんな状況に対処するのに求められるのはむしろこちらの「何を確認すれば原因にたどり着けるか考える」ことかもしれません。

ではインターネット接続の例のほうは何がどうなんでしょうか。読者各位で「切り分けて」、気分転換や頭の体操にでもご利用いただければ幸いです。

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